私は小さい頃からサナダのおとう様に私自身のことを色々聞かされて育った。
だからサナダのおとう様が本当のおとう様でないことは勿論、私自身の出生のことも知っている。
私が半分イスカンダル人だからなのか、私のこのところの成長が著しく早かった。
日々日々大きくなって行く私に、サナダのおとう様も少数の周りの人も、そして私自身もかなり驚いていた。ああ、私はどうなってしまうんだろう。この成長はいつ止まるの?どこで止まるの?イスカンダル人の体質を知る人は誰もいなかったから、とても不安だった。


・・・
でも、私がしなければならないのは、ちゃんと生きることなんだって、分かってた。だって、お母さまと叔母さまが私を必死になって逃がそうとしてくれたからだ。
私が最後のイスカンダル人。勿論、半分のイスカンダル人でしかない。でも、けっして自分が貴重人種だからと胡坐を書かず自暴自棄になったりもしないで、自分を大切にして行くことは決めていた。
あ・・・。ここで言いたかったのは、私は生きることに決して暗くなっていないということだ。

アケーリアス人がこの宇宙に人間の種を播いたという。
その一つがイスカンダル人になった。やがてイスカンダルは最先端の科学を持つようになったけれど、途中で制度的思想的大転換をした。
波動エネルギーを波動砲という武器にして周囲を征服して行くことを、止めた。
でも、”止める”、というのは中々出来ることではない筈だ。それでもそれを選択したのは、それがイスカンダル人に最も利益と幸福があることで、勿論イスカンダル星も安泰だという目算があったからなんだろう。

止めたと言ってもイスカンダルは科学力を廃棄したわけではないから、イスカンダルを星ごと連れ去ろうと挑んで来たデザリアムは考えれば非常に無謀だった。それが出来たのは自分達の科学の方が勝っているという自信があったからなんだろう。
彼らはイスカンダルに余程恨みつらみがあったようだ。
私はイスカンダルやお母様たちの消滅にただ落ち込んではいなかった。むしろその昔に何があったのかが知りたくてたまらなかった。
・・・


一日一日大きくなって行くにつれて色々なことを急速に急激に覚えて行った。覚えて行くほど、知って行くほど、遠いイスカンダルのことや宇宙の神秘が気になって行った。
宇宙に向かって耳を澄ますと・・・イスカンダル人は耳がいいのだろうか、様々な音や声が聞こえた。


”愛する” という気持ちを憎んだり否定するものが結構あるのには驚いた。
私に向かって突き刺さって来た様な気がしたのが ”人間はテクノロジーからするとノイズ” というものだった。


・・・
人間はテクノロジーからすると、ノイズなのだ・・・
・・・


私に怨念を込めて言われたような気がした。
人間のことは端から問題にしていないという非常に冷たい印象を受けた。それと比べると愛を否定し憎むことを言う人には、まだ愛を信じたい気持ちがあるようで、言葉にほんのり温度を感じた。


「愛を信じたい気持ちがあったのはガトランティス?・・・人間をノイズと言ったのはデザリアム・・・?」


イスカンダルがデザリアムに何かをしてしまったらしい。知らない内に何かをしてしまったのではないか?と、私は思った。
自分がしていることの大きさに気が付かなかった?、思いもしなかったことが起こった?
許してはくれないの?
許しては貰えそうもないことなんだね?
・・・許されることではないのかもしれない。





・・・


「澪。」
「おとう様」
「古代進が来る。婚約者の森雪も来る。」
「雪さん、ユリーシャ叔母様にそっくりなんでしょう?早く会いたい!!」
「澪も雪に似てるよ。君のお父さんの古代守と進は兄弟で、スターシャとユリーシャは姉妹、そのユリーシャと雪がそっくりなんだから、似ないわけがない。」
「うふふふふっ!会いたい会いたい会いたい!」



※『イスカンダルの欠片』※

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