イカルス天文台に山南修がやって来た。

「やあ、サーシャ・イスカンダル。ご機嫌うるわしゅう。」(山南)


山南修がサーシャに挨拶した。


「こんにちは、山南さん」(サーシャ)
「また少し大きくなったね。」(山)
「山南さん、地球では”真田澪”ですから。」(真田)
「ああ、すまん、すまん。そうだったな。真田澪さん。」(山)
「あ、そうだった・・・はいっ!」(サ)


真田志郎が山南を諫めた。
サーシャもつい、『サーシャ』と言われて応えてしまったけれど、地球では”真田澪”という名前でいなければならなかった。
下世話な話になるが、消滅したイスカンダル人の生き残りであるサーシャは良からぬ人には ”お宝”になるからだ。



山南は今、昇進を固辞して人材育成に力を注いでいた。
地球連邦航宙艦隊総旗艦「アンドロメダ」艦長から地球連邦宇宙海軍総司令官第65護衛隊隊司令になったが、イスカンダルの危機に救援を画策した新人乗組員達にヤマトから退艦させられた事件があった。
ガミラス人のローレン・バレル大使、芹沢虎徹・地球連邦防衛軍統括司令副長官も一緒だった。軍のトップにあたる彼らに処罰などあるわけがなかったが、ヤマトがガミラスと未知の敵との間の戦に入って行くのを止めることが出来なかったことに対して、世間的な手前、一応の責任を取ることになった。
当然山南が責任を負った。

ところで、イスカンダルへの表敬訪問より少し前のこと、山南は宙将への打診があった。
艦隊総司令のままでいて欲しい。出来れば現在の一等宙佐から上の宙尉になって欲しいと言われた。
けれど山南はそれを固辞した。
どう考えても、自分の師である沖田や土方のことを考えると、自分に宙将の資格はないと考えた。
人間の器が違うと思った。
自分は二人に敵う人物ではないし、なれないと、思った。
それをバレル大使に言ったことがあった。


・・・
「続く者の役割があるのではないですか?」
「あの二人を知っているだけに私が彼らの代わりのポジションになんて恐れ多くて。いや、本当に身に沁みて感じているんです。ただ、バレル大使も仰るように、私は役割を放棄していることになるんでしょうね・・・」
「何かやりたいことがあるのですか?」
「彼らの気持ちが分かるからどうも、引き留めることが心苦しくなるんです。」
「彼ら?」
「新人の戦士達です。彼らを見ていると自分も一緒にやりたくなっちゃうんです。」
「ふふふ」
「奴らと一緒にやっている方が楽しいかな、と。」
「それは駄目ですねぇ」
「駄目ですよねぇ。」
「育てる側にいたいということですか?」
「乗組員達は、なんというか可愛くなってくるんです。それに、多くの乗組員が亡くなりました。私が亡くしてしまった。」
「それは、あなただけが苦しむことではないのですよ」
「はい。分かっています。責任者として戦いで戦士達を沢山死なせてしまったから、そういう思いをしたくないから育てる側に回りたいと言っているのではないんです。」
「うん?」
「戦うのが戦士の役目です。地球の為に敵から地球を守る為に戦うのですが、相手を倒して、あるいは殺してしまえば幸せが来るとは言えませんよね。」
「そうですね。戦う前に話し合いが必要だと思います」
「力づくで相手を伸してしまうだけではいけないと思いました。また、戦いは人間が始めるのだから人間が終わらせなければならない。機械と人間、力というもの、そんなものをあの戦いでシミジミ感じたんです。生存や命について、我々はもっと考えて行かなければならないな、と。もっと教えて行きたい、と。」
「ふむ。なるほど」
・・・・


「ははは、最初から躓いてしまった。さて、私が来たんだ。今日は紅茶を一緒に淹れてみましょう。」(山)
「わぁーい!!」(サ)



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