「えーっ!」(古代)
「お母さんが?」(美雪)
「どうしよう。困ってるの・・・」(雪)


雪は長官秘書の仕事をしていたが、司令本部に詰めているよりも各国や地球以外の場所に飛び回ることが多くなった。防衛軍の各地に同僚達と赴き、現場が抱える空気を見、聞き、現状を報告する役割を仰せつかっていた。戦闘機を作る研究室や工場に赴いたこともあった。これについては『本部の現場を何も知らない事務の人が見て何を分かるというのだ?』と言う声も数々聞いた。
隠密行動とまでは言わないが、個人個人に密かに聴取して回るよりも現場の現実を肌で感じることが出来たし、挙げた報告から改善された点が結構あった。
雪は、物事と物事が滑らかに流れて行かない不具合がどこにあ、何をどう繋げていったらよくなるかを、早く見つけ、考えることが出来た。


「小さなことだったの。それもたまたまだったの。例えばそうね、A所は抱えている問題があって悩んでいたの。視察していたB所が解決の手段を持っていることが分かったから、それをやんわり伝えたと思ってくれる?それがたまたまた上手く行って評価されたみたい。でもそれで私に艦長職はどうかって言われるのは、話が飛び過ぎよ。あんまりいきなりよね?」
「お母さん、凄い!」
「艦長職か。小さい船から初めてみてもいいんじゃないのか?」
「えええっ!艦長よ?私、ヤマトではレーダーの担当だったのよ?一部担当署よ?戦艦を動かす勉強や訓練もしたことがないのよ?」
「ヤマトで色んな戦闘をして来たじゃないか。それにゼロだって操縦したんだ。(美雪に向かって)ゼロを動かすのってかなり大変なことなんだよ。」
「お母さん、あのゼロも操縦出来るの?」
「必死だったからなんとか出来た、ってだけよ。全体のことを指揮命令なんてとても無理。」
「勿論、長官達は色々考えて言っているのだと思うよ。」
「私を艦長にしたいわけ?」
「いや、雪がしたいのかしたくないのか、だよ。でも、嫌みたいだな。」
「引き受けるものが大きすぎるし、私自身、艦長なんて考えたことがなかったから全然ピンと来ていないの。」
「・・・。女の人で艦長をしている人っているの?」(美)
「勿論いるわよ。その人はやっぱり宇宙戦士訓練学校を出ているのよね。宇宙のこと、船の動かし方、戦闘のことまで、諸々、本当に色々知っているの。」
「凄いな〜女の人にそういう職業もあるんだね。」(美)
「なろうと思えば何にだってなれるよ。」
「それならお母さんだって。」
「美雪もお母さんに艦長になって欲しいの?」
「絶対に嫌なら断ればいいと思うけれど、お母さんそういうことも出来ると思うんだけどな。女の艦長だなんて、カッコいい!!」(美)
「もう。大変な職よ。」
「いつまで返事をしなくちゃいけないの?でも、お母さんはしたくないって思ってるんだよね?」(美)
「美雪の中学の合格発表がある頃ね。」
「ひゃ〜〜〜。私もお母さんも大変だ。」(美)
「医者のことも含めて、さ。」
「医者?」(美)
「雪は、お母さんは医者になろうと思っていたんだけど、ガミラスの攻撃があって何とかしなくちゃと思って看護士に応募したんだ。」
「うん。」(美)
「今、一応地球の周辺が落ち着いているからね。これからの自分について立ち止まって考えてもいい時期なのかもしれない。あ、そうだね、」
「なに?」(美)
「美雪も雪も、俺もだね、自分がどうしていくのがいいのか、考えるにいい時期なのかもしれないね。」
「お父さん、防衛軍辞めちゃうの?」(美)
「え?そんなことないよ?」
「でも、戦艦や戦闘機に乗っていないお父さんとか、防衛軍にいないお父さんって、想像出来ないよ。」(美)
「・・・。そうなのかな。そう見えるんだね〜・・・」


言われて古代は驚いた。
人と争うとか喧嘩することがとても嫌だった筈なのに、いつの間にか人を引き連れて戦いの場に行く立場の人間になってしまっていた。
そんな姿が板につくようになっていた。

古代は古代で困っていた。



※『困るんですけど8』※

「復活篇」へ

「トップ」へ

inserted by FC2 system